A.【相続手続きの第一歩】誰が相続人?戸籍で徹底解明!相続人の調べ方完全ガイド
「家族が亡くなったけど、誰が相続人になるの?」「相続手続きを進めたいけど、まず何をすればいいの?」
身近な方が亡くなられた後の手続きは、精神的にも時間的にも大変なことが多いですよね。
特に相続手続きは誰が相続人になるのかを確定させる「相続人調査」から始まります。
この調査を正確に行わないと後々トラブルに発展してしまう可能性も。
そこで今回は、相続手続きの第一歩となる「相続人の調べ方」について、分かりやすく解説します。
戸籍の収集から読み解き方まで、ご自身で進められるようにポイントを押さえていきましょう。
なぜ相続人の調査が必要なの?
相続人の調査は主に以下の理由で非常に重要です。
- 遺産分割協議のため: 遺産を誰がどのように分けるか話し合う「遺産分割協議」は、相続人全員の参加が必須です。一人でも欠けていると、その協議は無効になってしまいます。
- 相続放棄や限定承認のため: 相続財産にはプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。相続放棄や限定承認を検討する場合、自分が相続人であることを知ってから原則3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
- 各種名義変更手続きのため: 預貯金の解約や不動産の名義変更など、様々な相続手続きで相続人全員の同意や書類が必要となります。
正確な相続人調査は、円滑で間違いのない相続手続きの基礎となるのです。
相続人調査の基本は「戸籍」の収集
相続人を確定させるためには、亡くなられた方(被相続人)の出生から死亡までの一連の戸籍謄本等を取り寄せる必要があります。
これにより、誰が配偶者でどのような子供がいて、親や兄弟姉妹はどうなっているのか、法的に明らかにすることができます。
収集する戸籍の種類
主に以下の3種類の戸籍謄本等を収集します。
- 戸籍謄本(こせきとうほん): 現在の戸籍の内容を証明するものです。「全部事項証明書」とも呼ばれます。
- 除籍謄本(じょせきとうほん): 結婚や死亡、転籍などにより戸籍内の全員がいなくなった状態の戸籍を証明するものです。
- 改製原戸籍謄本(かいせいげんこせきとうほん): 戸籍法の改正によって、戸籍の様式が作り替えられる前の古い様式の戸籍謄本です。被相続人が高齢であるほど、この改製原戸籍謄本が必要になる可能性が高くなります。
これらの戸籍を辿ることで被相続人の親族関係の変遷(結婚、離婚、子供の出生、養子縁組など)を全て確認します。
戸籍の請求先と請求方法
戸籍謄本等は、被相続人の本籍地の市区町村役場に請求します。
- 窓口での請求: 直接役場の窓口に出向いて請求します。
- 郵送での請求: 遠方の役場の場合は郵送で請求できます。各市区町村役場のホームページで請求書をダウンロードし、必要書類と共に郵送します。
請求に必要なもの(一般的な例):
- 戸籍交付請求書(役所の窓口またはホームページで入手)
- 請求者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 手数料(1通あたり数百円程度、市区町村により異なる)
- (郵送の場合)返信用封筒と切手
- (相続人であることを証明するために)請求者と被相続人の関係を示す戸籍謄本等(請求先の役所と本籍地が異なる場合など)
- 委任状(代理人が請求する場合)
ポイント:
- 被相続人の最後の本籍地だけでなく、出生まで遡って本籍地を転々としている場合は、それぞれの市区町村役場に請求する必要があります。
- 「被相続人〇〇の出生から死亡までの戸籍を全てください」と窓口で伝えたり、請求書にその旨を記載したりすると、スムーズに収集できます。
戸籍から相続関係を読み解くポイント
集めた戸籍謄本等を時系列に並べ、以下の情報に注意しながら相続関係を読み解いていきます。
- 配偶者の有無: 被相続人の婚姻歴を確認し、現在の配偶者が誰であるかを確認します。
- 子供の有無と人数: 被相続人の子供(実子・養子)を全て確認します。
- 既に亡くなっている子供がいる場合は、その子供にさらに子供(被相続人から見て孫)がいるか(代襲相続の可能性)。
- 親の状況(子供がいない場合など): 被相続人に子供がいない場合、または子供が全員亡くなっている場合は、直系尊属である父母、祖父母が相続人になります。戸籍で生死を確認します。
- 兄弟姉妹の状況(子供も直系尊属もいない場合など): 被相続人に子供も直系尊属もいない場合、または全員亡くなっている場合は、兄弟姉妹が相続人になります。
- 既に亡くなっている兄弟姉妹がいる場合は、その兄弟姉妹に子供(被相続人から見て甥・姪)がいるか(代襲相続の可能性)。
- 認知された子供の有無: 婚姻関係にない男女間に生まれた子供でも、父親から認知されていれば相続人となります。
- 養子縁組の有無: 養子は実子と同じ相続権を持ちます。
- 離婚・再婚歴: 前の配偶者との間に子供がいる場合、その子供も相続人になる可能性があります。
注意点:
- 代襲相続(だいしゅうそうぞく): 本来相続人となるはずだった子供や兄弟姉妹が既に亡くなっている場合に、その子供が代わりに相続人となる制度です。
- 数次相続(すうじそうぞく): 相続手続きが終わらないうちに相続人の一人が亡くなってしまい、さらにその相続が発生することです。この場合、関係する相続人が増え、手続きが複雑になります。
相続関係説明図の作成
戸籍の読み解きが終わったらその結果を「相続関係説明図」として図にまとめると、相続関係が一目で分かりやすくなります。
法務局での不動産の名義変更手続きなどでも提出を求められることがあります。
相続関係説明図には被相続人と各相続人の氏名、続柄、生年月日、死亡年月日などを記載します。
決まった様式はありませんが、法務局のホームページなどで見本が公開されているので参考にすると良いでしょう。
自分で調べるのが難しい場合は専門家へ
相続人の調査は戸籍の収集や読み解きに手間と時間がかかることがあります。
特に以下のような場合は専門家に依頼することも検討しましょう。
- 戸籍の数が多く、収集や読み解きが大変な場合
- 被相続人に離婚歴や養子縁組が多く、相続関係が複雑な場合
- 代襲相続や数次相続が発生している場合
- 相続人の一部と連絡が取れない、または非協力的な場合
- 平日に役所へ行く時間がない、または手続きに慣れていない場合
相談できる専門家としては、弁護士、司法書士、行政書士などが挙げられます。
それぞれの専門家で対応できる業務範囲が異なりますので、ご自身の状況に合わせて相談先を選ぶと良いでしょう。費用はかかりますが、正確かつ迅速に相続人調査を進めることができ、精神的な負担も軽減されるでしょう。
まとめ
相続人の調査は、相続手続きを進める上で最も基本となる重要なステップです。
戸籍謄本等を丁寧に収集し、正確に読み解くことで、その後の遺産分割協議や各種手続きをスムーズに進めることができます。
ご自身で調査を進める場合はこの記事でご紹介したポイントを参考に一つ一つ確認しながら進めてみてください。
もし途中で難しさを感じたり、複雑なケースに直面したりした場合は、無理をせず専門家の力を借りることも賢明な選択です。
この記事が相続人調査でお困りの方の一助となれば幸いです。